朝の楽しいコーヒー

 

  1年ほど前から、月に一度か二度、朝のコーヒーをテラスで楽しむようになっている。その時はいつも、東京から通う人形教室の生徒さんが一緒だ。いわばその人のお相伴をさせてもらっているわけだ。それにはちょっとした理由がある。

 その生徒さんは、月に2度、朝一番の新幹線を活かし、早朝のアイトワにたどりつき、庭掃除をするのが楽しみ、とおっしゃる。京都めぐりがお好きな人で、アイトワの喫茶店にフラッと立ち寄っていただけたのがキッカケで知り合えた関係だが、生徒さんになって3年の歳月が過ぎ去っている。

 開店前に、その人にテラスの掃除をまかせ、妻は店内の掃除だけで済むわけだから自ずと時間が浮く。そこで「朝のコーヒーを」となったようだ。そのパターンが2年ほど続いたころから私にも時々声をかけてもらえるようになった。

 この日はその上に、とても楽しい2つの付録がついた。数年来の生徒さんと、そのエスコートで時々見えるというお嬢さんにくわえ、もうお一人、朗読劇『線量計が鳴る』を鑑賞したとおっしゃる生徒さんとご一緒できた。これが当週の『線量計が鳴る』の余韻を楽しむ最初となった。

 質問や説明が飛び交い、話がはずんだ。エネルギー問題を、どのように位置づけるか。それによって人生観が変わりそうに思う私だが、この点で息があい、とても楽しかった。それもこれも、この東京から通う生徒さんのオカゲだ、と心の中で秘かに感謝した。

 そもそも、「方丈」を造りたくなった動機の1つがここにあったことになる。東京から朝1番の列車で見えて、楽しそうに庭掃除をなさる。それが1年、2年と続いた。

 「ならば」という気持ちが何時しか心に芽生えたようだが、その思いを「ヨカッタ」にしたのは乙佳さんだ。こうしたことを振り返りながら、「ならば」という気持ちを咀嚼し直した。

 ある時フト、私は「恋しき」という広島県の府中にあった旅館を思い出した。そして、それが「方丈」つくりに結び付いたようなところがある。元は「鯉一式」という料亭であったようだが、和風旅館となり「恋しき」とかわり、広い中庭には2つの茶席があったが、いつしかその狭い方の一室に泊まることを私は好無用になっていた。商社時代のことだ。

 最初は、宿泊棟が満杯だったためにあてがわれたが、その後は、私の気に入り様が尋常でないと知った取引先の社長の心づかいのおかげだ。宿泊棟と同じ値段で泊めてもらえた。冷暖房と言う意味では不備だが、余りあるものが私にはあった。一度は妻にも味合わせたい雰囲気であったが、その実行段階でこの旅館はなくなっていたことを知った。

 なぜか、この悔しさが心に残り、その埋め合わせかのごとくに「方丈」を造ったような一面がある。だから無理をいって、この女性に、未完成段階で泊まってもらい、傘立てや靴を脱ぐマットなど、あってしかるべきものを教えてもらった。

 楽しい朝のコーヒータイムだった。

 
   

 

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