カラブリに終わった

 

 人形教室は、井戸がある一帯の土地を掘り下げて作った地下室だ。

 その後、JRが進めていた山陰線のトンネル工事が一帯の水脈を大きく変えたことが判明した。わが家の真裏あたりの山中(その山腹に常寂光寺はある)にJRは複線のトンネルをうがったわけだが、それが水脈を変えた。常寂光寺の妙見さんの滝も枯れた。わが家の井戸も、水を枯らしがちになった。だが逆に、大雨の時は異常増水するようになった。これはたまったものではない。サア大変。

 人形教室がほぼ完成し、仕上げの段階に入ってから、異常降雨があり、床上浸水の憂き目にあった。あわてて、設計段階で用意していた井戸用の排気口を、排水溝に転用することになった。水中ポンプで強制排水できる設備をほどこし、今日に至っている。この間に、豪雨が頻発するようになり、様々な手を打ってきた。

 この度は、書庫の基盤作りでユンボが入った。これを幸いに、井戸問題の改善をとなり、その「とどめの手」を施したくなり、ユンボの転用を願い出た。

 中尾さんの記憶では、元は排気口として計画されていたから、その配管は地上に向けて上がっていた、という。その上がっていた配管を活かし、排水溝にした、との記憶だった。

 そこで、その記憶の場所を掘り出し、いったん地上に向けて上がっているというパイプを突き止めて、上がった部分を切り下げ、水が流れやすくすることにした。

 その記憶に従ってユンボがうなり、相当以上の土を掘りだしたが、地上に向けて上がっていたはずのパイプには行き当たらなかった。「さあ、どうすべきか」

 竣工時は部分的にハイプが部分的に上がっていても、強力な排水ポンプを用いているから汲み出せるので「それでよし」としてきた。ところがその後、停電になるとお手上げであることが分かった。手をこまねいているわけにはゆかない、となった。豪雨の時は落雷を伴いやすい、ということで、このたびの工事になった。

 「ならば」と、ついでに掘り出して欲しい石があったから、それも頼んだ。

 結果、いったん地上に向けて上がっているはずのパイプを突き止められなかった。そこで、胃カメラ検査のための機械に似た、大型の機械を借りて来て既存パイプ(の下流部を掘り出して切断し、そこ)にカメラを突っ込み、検査してはどうかということになった。そこで翌日実施し、カメラを行き当ったところまで突っ込んだのだが、幾つかの理由から、その行き当ったところまで掘り返す気にはなれなかった。

 確かに、行き当ったところまでの距離は特定できたが、その位置は推定に過ぎなかった。また、その推定の場所が正しいとしても、そこまで掘ろうとすると温度計道まで作り直す覚悟が求めっれた。そこで、3つの成果をもって満足し、打ち切ることを決断した。

 1つは、中尾さんの善意と、中尾さんの記憶にも間違いがあることが分かったことだ。それがかえって中尾さんを、私の心の中ではより一層頼りにしたくなる人にした。

 2つ目は、ついでに掘り出してもらった石が、記憶の「4分の1程度の大きさ」であったことが判明したことだ。私は記憶の中で、勝手に石を大きくさせていたわけだ。そうと知って反省が出来ただけでも、価値があった。しかも、そうと知る前に「知らぬが仏」ではないが、惜しいことをしていたことも反省した。池は淵を石で固めていたが、その石の中にはこの さい掘り出した石よりはるかに大きな、この出て来た石の2倍ほどありそうな石があったのに、そうとは知らずにを埋め込んでしまっていた。この悔しい想いは、とても大きなココロの宝になるものと思う。なにせ「この石を1人で動かせた時代があった」。それは、1982年であり、リズさんも生き証人だ。

 3つ目は、私のバランス感覚に「賭けをする機会」を得た。チャンス到来と見た。実は、元々私は、この工事は不要ではないか、と見ていた。井戸にはこれまでにハッチを設置するなど、さまざまな手を打ってきたし、過日の工事ではコックも設けている。ということは、これらが功を奏し、停電時も難を逃れられるのではないか、と私は見て来た。

 つまり、この度取り除こうとした1mぐらいの落差なら、勾配を下げなくとも充分水圧の関係で自然排水するのではないか、と見ている。その勘の程を確かめる機会を得た、と言えなくもない、と考えたわけだ。

 これを確かめるには、大雨時の増水時に、排水のモーターを切って、コックをひねる必要がある。それでOKなら、つまり湧き出す水の水圧で自然排水するようなら、停電でも大丈夫になる。ダメならダメと確認し、急いでコックを元にひねり直し、排水ポンプを使って強制排水すればよい。そして、時間をかせぎ、新たな善後策を考えよう。

 こうした3つを根拠に、私は満足してこの工事を打ち切った。この3つをもって、私は掛け替えのない成果をえた、と思っている。
 


パイプには行き当たらなかった

 

 

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