有意義

 

 小倉山自治会とわが家の間で、防犯カメラについての「覚書」を交すことになり、その文案が固まった。そして、この覚書を自治会員各戸に回覧することになった。

 自治会員は今や100軒以上になっており、過去のいきさつを知らない人も多い。私が疎開で来た1944年の夏は、常寂光寺や落柿舎を含めて16軒だった。その多くは別荘のようなもので、商いを営む家は、歴史ある嵯峨人形をつくり直売もする三浦嵯峨人形店たった1軒だった。

 過去のいきさつを知らない人に、ここらで、過去に重ねた思案のありようを知ってもらっておく好機だ、と思う。自治会の未来を見据えて考え、どのような仕組みにすれば、うまく機能し、維持できるかを、ある日の寄合で随分思案している。

 何せ、1000年にわたる歴史を重ねてきた地だ。源氏物語や平家物語に登場する人物がうろついたところが点在している。そうした地に住まう者の思案と不安、責任と身勝手、あるいは義務と権利のありようなどを考察しながら、いかにすれば和気あいあいと住まい、次第に健全な自負心の持ち主になりえるか、などを先達は考えていた。

 その一端を、ここらあたりで思い返すことは有意義だと思う。ゴンベイが種播きゃ、カラスがほじくる、のようなことになってはいけない。それでは歴史を食い物にしてしまいかねない。歴史は積み重ねて育てるものだ、と私は5歳の時から教わってきた。

 昨今生じたこの執拗な「客引き行為」などは、最も恐れていたことだ。例えて言えば、公害が身体を侵害する問題であるとすれば、自然破壊は精神を侵害する問題であるだろう。そして、歴史を食い物にすることはもっと深刻な行為であり、人々の魂の侵害問題、と言ってよいと思う。

 この「覚書」には、そうした想い、つまり歴史の詐欺行為は許すまじ、の想いまで込められているもの、と見たいし、期待したい。

 借家人に過ぎないのに、「オーナーは」「オーナーは」と連発し、客引きをしているが、これは歴史の詐欺行為ではないか。たとえば、真っ赤なポルシェを借りてデイトに誘った女性に、この「僕の車はネ」と迫るよりたちが悪いのではないか。この例えの引用は、妻に知られたら馬鹿にされかねない。

 もちろんこの集いでは他にも、議題はあった。この「客引き行為」などの近況報告も、しあったし、私も長々したメモ書きを披瀝した。この報告は追って明らかにしたい。
 

 

            覚  書

小倉山自治会(自治会)と、自治会の一員である森孝之(森)は、自治会域内に防犯カメラ(カメラ)を設置するについて、次のように話し合い、合意した。

1、設置の目的は、自治会域内(域内)における観光客、散歩人、並びに住人などの安心安全の確保と、住民のうるわしき生活文化の維持向上に供するためである。

2、カメラ設置の必要性は、上の目的を著しく害する客引き行為や客待ち行為などの営業行為が昨年10月から域内で始まったことで生じた。そこで、自治会の当該問題の対策担当長である地区推進委員(委員)の長が再三にわたり、当営業行為者に中止するよう申し入れたが、中止も改善もされず、何らかの対策が求められるに至った。

3、本年4月1日、京都市は「市民及び観光旅行者等の安心かつ安全なまちづくりの推進」や「悠久の歴史の中で培われてきた都資格の維持及び向上」などのため、「客引き行為」「客待ち行為」あるいは「勧誘行為」など(客引き行為等)を禁止する条例を施行した。

4、自治会は自治会役員ならびに委員が話し合いを重ね、京都市当局と相談した結果、当局は実態調査し、上の安心安全をそこない、うるわしき生活文化を著しく乱していると判断。また警察などへの当該被害通報も重なっており、要対策と認められた。

5、対策とは、京都市当局には補助金と指導を、右京署京都暮らし安全課(暮らし安全課)には指導をえて、まずふさわしい場所にカメラを設置することである。

6、その設置場所について、暮らし安全課の指導を仰いだ結果、客引き行為等が現実に行われている近辺が妥当となり、森の敷地の一角(一角)が特定された。

7、森は、自治会の要請に従い、条件付きで一角にカメラを設置することに合意した。

8、条件は、カメラの維持管理、運営、原状回復などはすべて自治会が行い、一角の借地料として自治会は森に年間金1600円を、電気料金は別途実費相当額を支払う。森は、可能な限りカメラの正常性に注意を払い、異常などに気付いた時は直ちに委員長に通報する。当借地料並びに電気料は自治会費ではなく、「町づくり」基金から支払われる。「町づくり」基金とは、自治会が委員制度を立ち上げた後に、前委員長の発案で、当制度運営を円滑にするために寄付金等を積み立て始めたもので、委員並びに当該年度自治会役員の多数決により支出できる積立金である。

9、当覚書の有効期限は、カメラが設置された日から満1年間とし、両者のいずれからも事前に異議の申し出がなければさらに1年間自動延長し、以降も同様とする。

10、以上の内容に不都合や疑義などが生じた場合は、両者は当目的の達成をより有効にするために誠意をもって話し合い、内容を改めることができる。

                               以上

                         平成272015)年106

                                                   自治会長
                                                   自治会地区推進委員長
 


 


 

 

 

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