意義や知恵の使いどころ
 

 薪風呂の焚き方と、薪風呂を大切にしている訳をまず話しました。その上で、かつては、スギの枯れ葉拾いは子どもの役割だったことを伝え、この役割を通して子どもが次第に小さな大人に育って行く様子を語りました。

 風呂の焚き方は(マッチ1本で火がつく)スギの枯れ葉に始まり、太い薪にいたるまで計4種類の(乾燥させた竹や木の)燃料を使い分け、四季折々工夫して心地よい湯に焚き上げていることを説明しました。例えば冬は、38〜39度の熱く感じない湯から浸かり始めますが、その前に42〜44度ぐらいの(好みの)温度まで湯が沸くように焚口に薪を入れておく必要がある。

 ゆっくり温もりたいときは、とろとろと燃える薪を焚口に放り込んでおく。その薪の種類や太さ、あるいは量が問題です。この要領を心得ると、あるいはこうした湯の心地良さをおぼえると、風呂のありがたみを、薪を作るときから実感しはじめるものだ、とも教えました。

 とりわけ冬は、焚き上げるまでに2時間も3時間もかかりますし、夏は刻々と湯が熱くなりますから、「焚けましたヨ」と声をかけるタイミングにも心を配ります。格別の心地よさを感じてもらいたくなるからです。

 もちろん、願った通りに風呂を使い始めてもらえるとは限りません。そうしたときの湯加減の調整にもスギの枯れ葉は大活躍します。このスギの枯れ枝拾いが子どもの役割でした。

 子どもの中には、夜の間に風が吹いた朝は、登校するときに既に、駆けて下校する自分の姿を連想する子がいたものです。あるいは、授業時間中に大風が吹くと、家に「早く帰りたいなア」とソワソワした子がいたものです。一刻も早く林や森に駆けて行って、風が落としたスギの枯れ枝を拾い集めたくなった子です。その子は、駆けながら期待していた通りに、薄暗い林の地面が落ち枝で一面が茶色くなっていたことが分かるとドキドキしたものです。

 風呂の焚き役は、子どもが幼い間は主婦か受け持ち、柴や薪を大事に扱いました。子どもが拾い集めたスギの落ち葉だし、夫が用意した薪ですから、主婦はそれらを最小限で焚き上げる工夫をしながら焚きました。その焚き方を子どもは見よう見真似で覚えました。

 こうしたことを学生に教えながら、間もなく窓を開け放って風呂が使える季節になることを感じとっていました。その時にはまた、香りの話を忘れずにしたく思っています。薪の樹種によって湯船に漂ってくるほのかな香りが異なり、異なる喜びを感じるものです。
 
 

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