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わかったぞ、旅とは 11/01/09
 
 素晴らしい三が日でした。雪が残る元日は「遠来の客」を迎えました。かつてわが家でホームステイしたスイス在住のジェニファーのお父さんと、その夫人で『ハリーポッター』の翻訳者として広く知られる松岡祐子さんです。このお二人と元旦を祝いたくて、雑煮を2度も味わえたのです。元旦のお勤めをしたあと「ムシ押さえ」の澄まし雑煮で済ませ、お二人を迎えてから白味噌雑煮などわが家流の元旦の朝食で新年を祝いました。

 2日も午前中から来客と美酒を交わしました。その夜に、妻が寝がけに「(山には)何か食べるものがあるのでしょうか」とイノシシやサルに同情したのです。残雪が分厚い寒い夜でした。案の定、夜半にイノシシに侵入されていたのです。しかも、それに気づいたのが翌3日の10時過ぎ、妻が生ゴミを捨てに行った時のことです。

 もちろん私は、好天で明けた3日の起き抜けに、犬が夜半に吠えていたこともあって畑の点検をしています。雪の上に残る足跡をたどり、進入口を発見したかったのです。畑をくまなく調べましたが荒らされた形跡がなく、切り上げました。妻から「堆肥の山が」と聞いたときは後の祭、好天が雪を溶かしたあとでした。畑以外を見て回るとイノシシの被害を随所で見出しました。初の庭仕事は午後からで、まず暮れに使い切れかったエンジンソーのガソリンを、暮れに切り取った柿や楓を駒切りすることで空にしました。

 その後も、金曜日までは快調でした。が、週末に「歳」を思い知らされています。それは、調子に乗りすぎた庭仕事のせいでしょう。4日火曜日はアイトワの定休日。妻と一緒に、大晦日に済ませておきたかった作業に手をつけました。妻は落ち葉掃除。私は、ローリエ、枝垂れ桜、そしてザクロの剪定です。特にローリエは、暮れの思わぬ強風で傾いていた上に、大晦日の大雪で倒され、背丈を切り詰めて立て直すのに難儀しました。

 5日は今年最初の根気のいる仕事でした。囲炉裏場に積み上げてあった剪定クズの整理です。前年の富美男さんの剪定や前日の私の剪定から出た木クズが山をなしていたのです。オヤツを運んできた妻が「腱鞘炎になりますよ」と驚くほど、薪にする部分とクズにする部分をナタと植木鋏で丁寧に切り分けたのです。妻はそそくさと着代えて出直し、今年最初の焚き火です。でも手遅れでした。居間に戻ると水鼻がとめどもなく出始めました。

 熱い風呂に浸かり、湯割り焼酎を飲んでストンと寝たのが良かったよう、翌朝には水鼻がおさまっており、午後から庭に出ました。すぐに時雨はじめましたから温室に駆け込み、今年最初の温室仕事。越冬させるために運びこんであった幾つもの大鉢の整頓、喫茶店のテラスを春に飾る西洋サクラソウの長鉢の用意、次いで電気砥石器の修繕です。

 七草粥で腹を満たした好天の金曜日は、まず野菜類に日光を浴びせたくてレースのトンネルをめくりました。次いで、電気砥石器の修繕の続行です。温かい温室で、工具を操っているときでした。「わかったゾ」という気分にされたのです。妻が旅行に出たがらない心境です。「旅行とは、庭で繰り広げるこうした時間を棒に振らせる期間であった」とわかったのです。問題は、そのあとでした。囲炉裏場で、薪の寸法に切った木切れを束ねるのに夢中になり、凍てるような寒さに気づかなかったのです。オヤツを持ってきた妻が、急いで焚き火をしましたが後の祭。居間に引き上げたときにまた水鼻が出始めたのです。

 週末は、当週最後の来客でした。東トルコ旅行で知り合った人たちです。夜は、商社時代の仲間との飲み会がありましたが、妻の懇願でキャンセルせざるを得ませんでした。
 
松岡さんの通訳で、4人は意思疎通をはかりました。ご主人も、サルコジ大統領とフランス語で直に話し合えるほど語学に優れた人ですから、質問をぶつけもしました。最も「明瞭に意志を表明しやすい言語は」とか、最も「抽象的で複雑な思考を明瞭に示しやすい言語は」など。松岡さんを通して「哲学など形而上の・・・」などと、得心できる回答を得ることができました。

枝垂れ桜の剪定前と後。高齢者には危険な作業故に、細心の神経を払って没頭しました。頭の中は、上手な剪定と身の安全のことでいっぱいです。おかげで、気がかりだった3本の太い枝も無事に切り取れました。樹形と安全問題だけでなく、枝垂れ桜の東側にあるナンジャモンジャと北側にある月桂樹の日当たりなどを配慮した手入れでした。

ザクロの剪定前と後、そして切り取った枝。庭木の中で最もノコギリの刃がたちにくいのはザクロではないか、と思わせられました。その翌日、ナタで薪の寸法に断ち切りましたが、その時も「硬い木だ」と思っています。もし私が江戸時代に生まれておれば、「根付」をザクロの木でつくっていたに違いありません。

母屋周りの苔も、イノシシがひっペがしていました。幅は12cm程度ですが、まるでブルドーザーが狂ったように走り回ったかのごとき惨状です。鼻先を地面にあてて歩きまわるのでしょう。ミミズに行きあたったときに立ち止まり、舌でミミズを巻き上げ、またひっぺがしに移るようです。その光景を見たいものです。要は、妻に「そんなことを言っているから狙われるんだ」と恐れていた通りになったわけです。

倒れたローリエ(月桂樹)、背丈を半分に切り詰めて立て直した後の姿、そして切り取った上部。その後、葉を収穫するために居間の縁先まで運んで乾かしていますが、切り取った上部の幹も一緒に干しています。手頃な太さでまっすぐに伸びていますから、農具の柄などに活かそうと思っています。

金曜日の夕刻も凍てる寒さでした。木の枝を薪の寸法に切ったり、それを束ねたりする作業はもう一つ(Alternative)の没頭の時間です。手慣れた作業ですから頭は空っぽになりがちで、いつの間にか次の仕事の段取りや、講演や原稿の構想などにふけってしまいます。このたびも、そうと気づいて妻が焚き火をしてくれていなかったら、今頃は鼻水では済んでいなかったことでしょう。

週末に迎えた旅仲間。東トルコ旅行は、初対面の人たち11名の旅行でしたが、これで8名の仲間に訪ねてもらえました。その都度、失敗談など思い出話に花を咲かせます。妻も、親しい人を訪ねたりする旅は喜びますが、さもなければ私の思い出話や私の日誌で充分楽しめるようです。それよりも、庭仕事や人形創りなど自分にしか出来ない用事や活動のほうがずっと楽しい、というのですから手の施しようがありません。

 

 

 

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